1.1型糖尿病発症
高校2年の夏休みに、1型糖尿病を発症しました。
夏休みのある日、リビングの床から起き上がれなくなるほど全身がだるく、魚屋のバイト中には喉の渇きが我慢できず大量に水道水を飲み、30分に1回はトイレ(小便)に行き、なぜか頬がこけるほど痩せていました。それはただの夏バテだと思っていて、

「夏バテに負けるわけにはいかない!」

と、そんな状況の中でも、何度も足を攣りながら自転車で、千葉の田舎まで梨狩りに行った。その翌日、親に勧められて病院へ行き、血液検査をすると、

1型糖尿病だね。即入院。」

と告げられました。
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型糖尿病という聞いたこともない病気になってからすぐ、医者の先生と看護師の方から、どういった病気か、どうやって生活していけばいいかなどの説明を受けました。

まず、1型糖尿病は遺伝でも生活習慣病でもないこと。そして、血糖値を下げられない体になったから、血糖値を下げるために食事前と寝る前に自分で注射をすること。その注射の量は自分で食事の量に合わせること。量が合わないと低血糖や高血糖になり、全身にダメージを受ける。など。具体的には、

「高血糖で目が見えなくなるかも」
「高血糖で手足を切ることになるかも」
「低血糖で脳に糖分が回らなくて死ぬかも」

などなど。
色々な話を医者の先生や看護師さんから聞いたが、それに対してなんとも思っていなかったのか、現実として受け止められていなかったのか、落ち込みも喜びもしなかった

2.生きようと思った!
初めての入院生活はかなり暇で、自分の目が見えなくなること、足がなくなること、死ぬことなど、1型糖尿病になったことによって引き起こされる合併症について想像していました。その結果、自分の健康や体調管理について考えるようになり、今、生きていること、産み育ててくれた親に感謝するようになりました。
そして、元気なうちに元気な体を存分に使おうと思いました。

「目が見えなくなるかもしれない」けど、今は見える。本が読める。きれいな景色が見える。
退院してすぐに図書館へ行き本を読み始めました。行ったことがない場所にも行きたくなり、冬には勢いのまま一人で韓国に行きました。

「手足を切ることになるかもしれない」けど、今はある。歩ける。スポーツができる。大学では武道(躰道)の部活に入り、大学院では徒歩で千葉県横断やしまなみ海道を渡り、最長では大阪から千葉までおよそ700kmを約3週間かけて歩いて帰宅しました。スポーツや過酷な散歩で繰り返し怪我をしながらも、最大限に自分の体を使って楽しんでいます。

「低血糖で死ぬかもしれない」けど、今は生きている。時間を大切にして、生きているうちにもっともっと色んなことをやりたいと思った。
生きよう!と思った。

3.1型糖尿病だから挑戦する3つのこと

・1型糖尿病の認知度を高めたい

僕自身も1型糖尿病になるまで、その名前を聞いたことはありませんでしたが、2018年、日本だけでもその患者数は約10~14万人いるそうで、およそ1000人に一人は1型糖尿病を持っていることになります。それにしてはあまりにも認知度が低い。「1型糖尿病です」と言ってもいわゆる糖尿病と思われることもしばしばあり、「若いのに食事制限とか大変だねー」「え、注射するの?!」といったリアクションをよく貰いました。今は一言目には「注射をしないといけない病気」と伝えてから1型糖尿病を知ってもらっています。

1型糖尿病と2型糖尿病

1型」糖尿病は、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島と呼ばれる部分にあるβ細胞が障害されてインスリンを産生できなくなった結果、高血糖状態が続き、生存を危うくします。このため、高血糖を是正し生存するために、注射によってインスリンを補う治療が必要です。1型糖尿病は子供や青年に多く発症します。
一方、「2型」糖尿病は、遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症すると考えられていますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。糖尿病患者の95%以上が2型といわれていて、中高年に多く発症します。2型糖尿病では、インスリンは分泌されているものの、働きが悪くて血糖値が下がらない(インスリン抵抗性)場合や、分泌そのものが減っている(インスリン分泌低下)場合があります。高血糖が是正できない場合は、薬やインスリン注射による治療を行うこともありますが、まずは運動療法や食事療法による治療が行われます。

出典:オムロン ヘルスケア

 

認知度が低いことによる患者の方への負担は無視できません。
というのは単純な1型糖尿病による体調不良に加え、「周囲に知られたらどうしよう」という余計な負担を負っている方が多くいます。例えば、人前で注射をすることを避けて高血糖症状が出てしまう。学校の友達や会社の仲間に伝えられずに、血糖値が異常だとわかっていてもすぐに対処ができない。営業先でお菓子を出してもらっても、その場で注射ができずに遠慮してしまったり、頂いて高血糖症状が出てトイレに行きたくなってしまったり。
挙げればキリがありませんが、これらは1型糖尿病の認知度が高くなることで多少なりとも解消される問題だと思います。
一方、フィンランドの友人に初めて会ったとき、「僕は食べる前に注射をしないといけないんだ」と話したときに、「1型糖尿病だったんだね。低血糖とか我慢してなかった?」と返してくれました。彼の周りには1型糖尿病の人はいないそうです。そんな世界がもっと広がってほしいです。

・治療法を知り、広めたい。
2018年から1型糖尿病の患者会、YOKOHAMA VOXに参加させてもらっています(年に2回)。そこでは300~400人程の患者や医療関係者の方が集まり、毎回新しい発見があります。
発症時に病院で「注射の針は毎回交換する」と教えてもらっていたものの、毎回交換している人のほうが少ないのでは?と思うほど、皆同じ針を繰り返し使っていたり、血糖値測定のための血を出す針も、「これは繰り返し使用できない。もし血が出なかったら捨てて新しい針を使って。」と、指示を受けていましたが、裏技(?)を使えば繰り返し使用できると、患者の方から教えてもらいました。それ以降、少しの間食でもしっかり注射をするようになり、血糖値も測定するようになりました。このような、患者の方々が当たり前に(自己責任で)やっていることでも、病院では教えてもらえないことがいっぱいあります。患者会などのコミュニティがあることで、色々な情報共有ができ、習慣が変わり、健康状態が改善することを実感しています。

話は変わりますが、北欧の国々での1型糖尿病の発症率は日本より高く、フィンランドと比較すると日本は1型糖尿病の患者の年間死亡率が2倍ほど高いという研究結果が2003年に報告されています (参照)。現在では日本の1型糖尿病治療も進んでいるとは思いますが、フィンランドをはじめ他の国での1型糖尿病の方の普段の生活を知り、良い習慣は真似し、広めたいです。

・1型糖尿病の旅行に関する情報をまとめたい
僕は出かけることが好きなので、2019年5月から2年ほどかけて世界中へ出かけてきます。
そこで、どうすれば海外でインスリン(注射)を手に入れることができるのか。医療費はどれくらいかかるのか。1型糖尿病でも使える海外保険はあるのか。天候によってインスリンがダメになってしまう地域があるのか。そもそも何に気をつければいいのか。
出かけるついでにこれらを明らかにし、1型糖尿病の旅事情をまとめます!

認知度を高めたい。治療法を知り広めたい。1型糖尿病の旅事情をまとめたい。
以上3つのことに挑戦してきます。